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「これからの学校教育に対応した、小・中学校が共に使う新図書館。」東かがわ市立大内小学校


これからの学校教育に対応した、
小・中学校が共に使う新図書館。

 2013年4月に開校した大内小学校は、東かがわ市の大川中学校区学校再編事業として、2つの小学校を統合し大川中学校内に併設・新築された。市が目指す小・中連携教育を軸とした学校づくりを進めるうえで、小・中学生が共用する施設は、双方の教育および生活面をつなぐ重要な役割を持つ。新図書館もそのひとつであり、共用に必要とされるスペース・機能・構成や活用について十分な検討がなされた。そして、小学生から中学生まで幅広い年代の利用をサポートする専任の図書館支援員が配置されたのである。
こうした図書館についての考え方や活用状況について、東かがわ市立大内小学校の六車校長と学校図書館支援員の池田氏に、新図書館として選ばれた「平湯モデル」の導入について、東かがわ市教育委員会の赤澤氏と読み聞かせボランティアの狩野氏にうかがった。

小・中連携の図書館教育を支えるのは、
専任職員ときめ細かな活用システム。


連携教育の良さは、
小学生と中学生の緩やかな関わり合い。

東かがわ市立大内小学校
校長 六車 周二 氏
 
 市の「小・中連携教育」では、隣接して建つ小学校と中学校それぞれの良さを生かしたうえで、小学生と中学生が日常的に顔を合わせるといった自然な交流を進めています。日頃の連携活動として、小・中学生が一緒に行う地域清掃や、相互乗り入れ授業などを行っており、中学生による小学生への読み聞かせも計画中です。
 こうした活動は、中学校へ進学した時に陥りやすい「中1ギャップ」の解消にも効果的だと思います。「中1ギャップ」は、クラス担任が教科別担任になり、友だち関係が変わり、生徒指導も厳しくなるという環境の変化への不適応から起こります。そういう時に、相互乗り入れ授業で教えてもらった先生が中学にいたり、卒業した小学校が近くにあったりすることは、子どもの安心につながるのではないでしょうか。学校側も、お互いの校則を見直して共通ルールを決めたり、生徒の情報交換をしたりするなど、ギャップを減らすことを考えていくつもりです。



楽しみ読みのエリア/入り口近くのドーナツベンチは、新着本や雑誌を読む小・中学生で賑わう。

入口左の掲示コーナー


授業終了のチャイムが鳴り、図書館へ次々とやってくる子供たち。


子どもたちが集まり利用しやすい、
図書館の環境づくりを。

 東かがわ市の図書館教育の目標は、学校図書館に親しんで読書の楽しさを味わい、豊かな情操を養う。そして図書館を利用する心がけや能力を育て、主体的な学習でその効果を高めることです。
 こうした教育が行える小・中共用の図書館を実現するには、環境づくりが大事であると考えます。市は、大内小学校での図書館新設のために、2年ほど前から統合前の2小学校と大川中学校の計3校分の蔵書整理と新たなバーコード付けを開始しました。これは、子どもたちがひとりで本を借りたり、専任職員が蔵書管理をしたりするために必要な土台づくりとなります。
 また、共用できるスペースの確保と、子どもたちが本を探しやすいことや楽しく読めることも重要になってきます。本校にこうした環境を備えた新しい図書館が完成したときには、「平湯モデル図書館にして本当によかった」と思いました。そして、最もありがたいと感じているのが、学校図書館支援員を配置してくれたこと。そのおかげで、子どもたちがいつでも行けて、学級担任が同行しなくても本を借りられる図書館が実現したのです。


PC・検索コーナー


展示台/多様な演出で子どもたちの心をつかむ。


学校や生活のなかで読書週間を身に着け、
図書館利用に活かす。

 図書館利用が日頃の学校教育や生活全体のなかで身近になり、読書習慣が身につくようにしたいと考えています。授業では、月・金曜日の朝に「読書タイム」を設け、さらに金曜日の読書タイムには、市の読み聞かせボランティア「こそあど」のスタッフが月2回来てくれます。11月には読書週間がありますし、県が進める「23(にさん)が60(ろくまる)読書運動※」という親子読書を各家庭に働きかけています。また、学級活動の時間には、先生と子どもたちが相談して図書館利用の目標を立てます。
 図書館へは、小学生は同じ建物内の移動ですみますが、別棟の中学生は靴を履き替えてから来なければなりません。そのためか、中学生の利用はまだ少ないのが現状です。しかし、開館して半年ですし、まずは新しい図書館に親しみ、新しい借り方・返し方に慣れてもらったうえで、今後の活用システム作りをしていきたいと考えています。

※23が60読書運動:「子ども読書の日」の4月23日にちなみ、毎月23日を含む1週間に計60分以上を目標に、家庭で読書に親しもうという運動。


貸出や返却の担当も図書委員の役割。


新着書展示架/入ってすぐの場所にあり、小・中学生ともに人気があるエリア。


小学生の調べ学習のコーナー/4人掛けで本やノートをみんなで広げられる大きめのテーブル。

楽しみ読みのエリア/丸テーブルは、交流の場となる。 


楽しみ読みのエリア/好きな本を選んだり見せ合ったりする子どもたち。

子どもたちと先生が気軽に使える、
図書館づくりと学内連携を。

東かがわ市立大内小・大川中学校
学校図書館支援員 池田 ゆかり 氏

小・中学生が共用する図書館として、両端に小学生、中学生それぞれの調べ学習エリアがあり、中央を共用の楽しみ読みのエリアにしています。楽しみ読みのエリアの図書は、主に小学校中高学年を中心に構成しました。これは、中学生にも気軽に読んでもらい図書館に親しんでほしいという意図があるからです。また、先生に対しては、必要ならいつでも電話で図書館利用を申し込めるようにして、授業での活用につながるようにしました。
 図書館に私が週4日いますので、そのせいか、多くの子どもたちが気軽に訪れて、本を借りたり読んだりしています。毎日100冊くらいの貸し出しがあり、バーコードで貸し出し管理ができて助かっています。子どもたちは、閲覧テーブル以外にも、ドーナツベンチやカーペットに座ったり、展示台の前で立ち読みしたりと、自分が気に入った場所で読書をします。昼休みは、そんな子どもたちで賑わっています。
 広い司書室には、未整理の図書、資料的な図書などを収納しています。大きなテーブルが置いてあり、掲示物を作ったり、図書委員会の子どもたちと話し合ったりできるので重宝しています。学校の真ん中にあるので双方の子どもたちが来やすく、図書館をよく知る小学生が中学生になったら、もっと来館するようになると思います。



司書控室、作業室、生徒図書委員の活動の部屋


司書スペース/湾曲したカウンターは子どもたちを呼び込みやすく、館内も見渡せる。サービスと管理がしやすいように広いスペースを確保。

市民・行政・学校と専門家の連携が生んだ理想の図書館。

理想的な学校図書館の実現には、施設づくり以外に、本の整理や管理、司書の研修といった下準備が大切になる。
大内小学校では、市民の要望を受けた行政を中心に、学校と図書館の専門家が計画初期から協力し合い、理想を目指し積極的に推進してきた。

子どもたちにとって図書館は大切、
という思いが原点に。

東かがわ市教育委員会事務局
赤澤 正巳 氏

  大内小学校の統合の良い面として、先生が増えることで研鑽し合い、教員としての質が上がることが挙げられます。このことは、先生の影響を受けやすい小学校時代の子どもにとって大事なことだと考えます。実をいうと私は、“学校の図書館は大切”という思いを、小学校時代から持っていました。その思いを、図書館の重要性を見直すという文部科学省の動きや、専任の司書を置くという市の方針が後押しして、大内小学校に理想的な図書館をと考えるようになりました。まず、学校図書館学を専門とする四国学院大学の田中紘一教授に、その役割や重要性を教えていただき、それを踏まえて、狩野さんからご提案のあった平湯モデルを検討することになったのです。

見学で明るい館内と司書さんを見て、
平湯モデルが最適と判断。

 当時、私は平湯先生を存じ上げていなかったので、先生を長崎に訪ね、その折りに平湯モデルの大木町図書館を見学しました。明るい館内で自信を持って仕事をされる司書さんを見て、こういう環境を大内小学校につくりたいと実感したのです。さらに、学校の先生方にも久米南町立図書館を見学してもらい、平湯モデル図書館の良さを理解していただきました。こうした経緯があって、ようやく平湯先生に図書館づくりを依頼し、協力していただいた方たちと私の思いが結実した図書館ができあがりました。
 また、開館の1年ほど前から、図書館支援員となる池田さんには運営のノウハウについて研修してもらいました。3年間ほどは、池田さんの頑張りと先生方の協力にかかっているのではないでしょうか。


子どもたちが次々に来館する姿を夢見て、
平湯モデルを提案。

読み聞かせボランティア「こそあど」
狩野 恵子 氏

 大内小学校へは、読み聞かせボランティア「こそあど」のスタッフとして、時々出かけています。平湯モデルと出会ったのは、私が「学校図書館を考える会・丸亀」の事務局にいたとき。「学校図書館を考えるつどい」で平湯先生の講演を聞いて、先生のお考えが心に残りました。今回、大内小学校に新しい図書館ができるという話を聞いて、ぜひ子どもたちにいい図書館環境を用意していただきたいと思ったのです。そして、専任の司書も配置されると聞き、大変楽しみにしておりました。
 先日、読み聞かせの報告会を図書館でしていたら、授業終了のチャイムが鳴り子どもたちがどっと入ってきました。この様子を夢見ていた私にとっては、本当にうれしい光景でした。



東かがわ市立大内小学校図書館の平面図

東かがわ市立大内小学校
所在地:香川県
基本設計・監理:㈱阿波設計事務所
実施設計:㈲斎賀建築設計事務所
図書館家具設計・レイアウト・配架指導:平湯 文夫、愛知㈱学習環境プロジェクト

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