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事例紹介:玄海みらい学園 メディアセンター

校内のどこからでも見えるメディアセンター。みらいホール では図書館司書によるXmasハンドベル演奏を開催。


本に親しめる環境づくりで小・中一貫校の学びを支える。

玄海みらい学園は、町内の2つの中学校と2つの小学校を統合し、施設一体型の小・中一貫校として2015年4月に開校した。玄海町では、学校づくりについて年月をかけて話し合いが行われてきた。そして、子どもたちが9年間を通して学年を越えて学び合い、新たなことに挑戦できる教育環境が整えられたのである。なかでも、学校の中心に位置するメディアセンターは、その教育にとって重要な役割を持つ。学園開設の背景やメディアセンターについて、教育委員会教育長の小栁勉氏、学園長の岩崎一男氏そして学校司書の森三絵子氏・八島弘子氏にうかがった。

念願の小・中一貫校の中心に、読む力を育むメディアセンターを設置。


玄海町教育委員会 教育長 小栁 勉 氏

地域で話し合いが重ねられ、ついに小・中一貫校が誕生

 1956年に当時の値賀村と有浦村が合併して玄海町になってから、60年を迎えます。この間に何度か中学校の統合が協議されましたが、玄海みらい学園開校に向けた動きが始まったのは、1999年頃からです。2010年には有浦地区の3小学校が統合して有徳小学校が旧有浦小学校跡地に開校し、この時点で小学校と中学校は2校ずつになりました。
 それから半年後有徳小学校の新校舎建設にあわせ、このまま2小2中でいくのか、もしくは統合して小・中一貫教育を進めるのかが話し合われ、最終的には、統合して小・中一貫教育を行う方向へまとめられました。私は、小さな町で小学校と中学校が分かれていて、“小学校を出た子どもが中学校でどのように過ごしているのかを、町内の先生たちが知らない”という状況は、不合理でなりませんでした。小・中一貫教育になればこの問題は解決するのです。
 地域を廻って十分に説明を行い、小・中一貫教育について了解をいただいて、町にとってはかけがえのない学校「玄海みらい学園」が2015年4月に誕生しました。


読書の楽しさが味わえる、メディアセンターを中心に

 新しい学校にとって、メディアセンターは、重要な存在です。人と話す時には自ら持っている情報が役立ちますし、それは本やパソコンなどから手に入れることができます。そして何よりも、本が与えてくれる世界では、紙の手触りと読む楽しさが味わえます。私は、中学生時代に学校図書館に入り浸って、本の世界を楽しみました。根っこにその体験があります。この体験を、たくさんの子どもたちにしてほしいと思っていました。
 校内のどこからでも本が見えるように、メディアセンターを学校の中心に配置しました。内容やレイアウトを検討する段階で、30年ほど前にお世話になった平湯先生を思い出し、お願いしました。佐賀県職員だった私は、当時、私設の移動図書館車を週末に走らせていました。その時に平湯先生に出会い、図書館についていろいろと教えていただきました。
 オープンで明るいメディアセンターは、子どもたちをいつでも迎え入れてくれます。しかし、壁がなく日射しがよく入るがゆえに、音や夏場の暑さなどの課題もあ
り、子どもたちが利用しやすい環境づくりをさらに進めていかなければと思ってい
ます。
 “大人がしてくれることを待つ子どもたちが多い”という、今の日本の状況が気に
なります。読書によって自ら考え自ら実行できる人になることを期待しています。
本は人間を自由にします。読書が子どもたちの人生を支える力になると信じています。

心と学びの成長を後押しする本が身近にある教育環境を目指す。


玄海みらい学園 学園長 岩崎 一男 氏

豊かな心とコミュニケーション力を育てる小・中一貫教育を

 開校初年度の教育目標は、「あいさつが響く」そして「歌声が響く」学校としました。私は、人と人のコミュニケーションにとって、あいさつはとても大切なものだと思っています。本校では、全校児童・生徒527名のうち、約7割の子どもたちがバス通学
です。登校時には、バス通学の子どもたちや自転車・徒歩通学の子どもたちを先生たちが並んで出迎え、一人ひとりにあいさつをしています。毎日のあいさつから、子どもたちの様子や微妙な変化が分かります。また、音楽は心に豊かさや元気を与えてくれるので、朝の会や帰りの会で学級に歌声を響かせてほしいと思います。
 本校では1年生から、電子黒板とホワイトボードを活用して授業を行っています。デジタル教科書と併用して使われる電子黒板は、視覚的で分かりやすいので、子どもたちはより興味を持って授業に取り組んでいます。実は、佐賀県の電子黒板利用は全国でトップなのです。
 こういった教育環境のなかで、他人と主体的にコミュニケーションがとれる、豊かな心をもつ子どもたちを育てたいと思っています。


身近なメディアセンターを、ふだんの学習に取り込む

 町独自の取り組みである保育園から中学までの一貫した英語教育や、電子黒板のようなICT機器を使う授業は、子どもたちが将来に必要となる生きる力を育みます。メディアセンターは、そういった学習のなかで調べたいことや疑問が出てきたときに、子どもたちがすぐ行けるような場所にあります。また、子どもたちが自然に集まってくるので、交流する場にもなっています。


 教職員側は、授業の中にどう図書館活用を取り込んでいくかについての研修を進めています。司書さんとのコミュニケーションも大事で、今後は定期的に話し合いを持ちたいと考えています。メディアセンターの活用は始まったばかりですが、ふだんの学習や生活のなかに役立てていけるようにしたいと思います。

子どもたちも司書も使いやすく、より本に親しめるような環境づくりを。 ~学校司書のお二人にうかがいました~

 「平湯モデル図書館」のプランはすばらしく、書架も本当に使いやすいと感じています。家具を設置したときに、平湯先生に配架指導をしていただきましたが、まだまだ使いこなしていない状態です。私たち2人の最初の仕事は蔵書点検でした。書架の高さが私たち司書に合っていたのか、2万冊の図書を1日で点検できたのです。これはすごい! と驚きました。棚板の奥行きも、子どもたちが取り出しやすいサイズです。また、一般的に絵本の配架は大変ですが、この絵本架は仕切りの位置がよくて配架しやすいですね。子ども目線でつくられていますが、司書目線でもあると思います。


学校司書 八島 弘子 氏

「本の貸出は多いときで1日500冊以上、平均でも200~300冊ほどありますね。借りるだけでなく、メディアセンターでじっくりと本を読んでほしいとも思っています」と八島さん。


学校司書 森 三絵子 氏

「本が読めない子をいかに読めるようにするかも、私たちの仕事です。無理にではなく、読みたくなったときに興味をそそるような本が置いてあるような環境をつくりたいですね」と森さん。



玄海みらい学園 メディアセンター
所在地:佐賀県
施主:玄海町


SCENE85(2016年4月発刊)より


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