研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.011


リタイア後10年間の最後の1年となりました。

 唯一の週1日のお勤めである長崎純心大学でも新年度が始まりました。リタイアして9年がたち、まもなく70歳です。その実感が全くわかず、気分は40代というところですが、つめた仕事は長くつづけられなくなりましたから、高齢者の仲間入りしたことはまちがいなさそうです。それにしても、リタイア後の9年間はちょっと速すぎた感じです。

 リタイアの時、「これからは自分で自分を生きる」と、52歳で家業をすてた伊能忠敬のひそみにならい、もったいないほどの勤務条件の仕事もすべて辞退して、ぜひやりたい仕事だけにしぼりこんだつもりでしたのに、日暮れて道遠しの感一入です。

 新年度の授業が始まった日、学長室を訪ねて、今年度いっぱいで非常勤講師を辞退させていただきたい旨を伝えました。これからの1年間の4講座を47年間の教壇生活の最後として大切にし、いよいよの人生のフィニッシュに備えたいと思っています。10年前のリタイアの1年前、17年間かかわった大学図書館の経営から離れて、研究室を図書館の外に移してリタイアに備えたように。

 みなさんや学生にいくつもつけていただいた中の1つ「フットワークの平湯」は、まだつづけていますが、学校図書館の中などで見かける70歳は、やはりかなり奇異に見えるのではないかと思いはじめています。「70歳なんて全くそんなには見えませんよ」などといってくださるみなさんの世辞に励まされて、せいぜい若作りして、もうしばらくは、出かけようと思っています。

 9年前のリタイアの挨拶に「これからの10年ぐらいは、なんとか元気で人生のフィニシュを全うしたい。それ以後も元気ならもうけもの」と覚悟して生きたはずでしたが、人生のフィニッシュは70代に先送りされた感じです。あまりにがむしゃらな人生だったので、やり残したことが多すぎます。やはり凡人にはみちたりた晩年など、なかなか望めないもののようです。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


研究室だよりの目次へ戻る


関連するエントリー

最新のエントリー

エントリー一覧へ >