研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.061


平湯モデル、デザイン、生き方、真実、大切なこと。

 平湯モデルをひとことでいえばシンプルということになるでしょうか。大切なことをしっかりおさえて、余計なことはなくすといってもいい。大切なことというのは、家具として、図書館としてしっかり機能することで、余計なこととは、かざりとかこびとか受けねらいとかになるでしょう。
 いきなり名指しは憚られますが、私は、ピーターラビットが大好きでミッキーマウスは受け入れられません。ポターは、ダビンチのように、解剖学まで学んで描いたといいますが、、ミッキーマウスには媚びしか感じられないのです。テレビにもちまたにも媚びがあふれています。ユーモアや笑いは大切でもお笑いは不要です。市場でも顔と好みをよく知っていて相手してくれる店には行っても、紋切り型ばかりの店に行く気にはなりません。店員教育も営業の研修もマニュアルロボットづくりしかやってないところが多くないでしょうか。
 正岡子規の写生も、柳宗悦の民芸の美も同じことを言ったのだと思います。文芸にも工芸にも飾りが多すぎるということでしょう。
 子どもは原色が好きだとかいって、幼稚園や保育園の遊具などにたくさんとり入れられていますが、平湯モデルでは、木の生地そのものが温かくやさしい桜やパインの色や木目そのままで仕上げます。子どもは、原色が好きだからといって、使いすぎたら、感性を育てるよりも、スポーツ紙などのようにどぎついものでなければ感じとれない人間にしてしまうと思うのです。すぐれた絵本も本も、表紙そのものに最高の装丁がなされています。その主役を最大限にひきたたせるようにデザインするのが平湯モデルです。木も人間も動物も、自然にあるものそのものが美しくすばらしいと思っているからです。一つひとつの家具もレイアウトも、シンプルですっきりしているのが、いちばん美しく、機能的で、力があると信じきって仕事をしています。


長崎市の学校図書館改修法は全国にも展開できそうです。

 それは、全国各地を訪ねていて、どこにも、木工にたけて奇特な用務員さんがおられるのを知っているからです。校長先生も事務官の方々もです。そして、全国のほとんどの自治体が公有林をもち、檜などの間伐材の活用を考えていることも分かりました。近年、学校図書館の資料もかなり潤沢になり、学校司書の配置も進んでいます。そんな中で、施設があまりに殺風景で、大切な書架が奥深く使いものにならないものばかりで、学校図書館を生きかえらせるのに大きなネックになっています。みなさん、施設には苦手な人ばかりのようです。
 「施設をなんとかしたいが、書架一つも買うお金がない。お金がなくても施設をよくしていく方法を教えてほしい」という熱望に応えて『3千円から3万円でできる学校図書館の手づくり改修法』を出版しました。わずか1年余のあいだに、かなり活用していただいていますが、これに、セミプロの用務員さんに加わっていただけたら、格段に進展していくのにと思いつづけていました。それに、市有林の美しい檜の間伐材を集成材にして喜んでタダで提供していただけるというのは、ほんとにラッキーでした。その結びつけをやっていただいたのは、学校図書館に熱心な市会議員さんたちでした。
 ノウハウは、私の『3千円から・・・・』を使っていただけばいいのです。庁務員さんにも農林整備課にも挑戦してください。私も協力します。


    


 昨年10月、ここで紹介した調べ学習の本の著者、遊佐(ゆさ)さんが、今度は8人の仲間たちと上のような、「読む楽しさ」を伝える本を出しました。読む楽しさをよくもここまで知った小中高校の学校司書が9人も集まったことに驚きました。司書の側からの本読みの方法10に子どもの側からの方法15、合わせて25もの方法を列挙したのは世界でも始めてかもしれません。そのせれぞれについて簡潔明快にのべたこの本に驚嘆しています。
学校司書たちもここまでプロフェッショナルになっていたのです。「今どき、本を読むのに手助けしてもらわなきゃならぬ市民がいるのかね」といって、東京都立高校から正規の学校司書をなくしている石原都知事にぜひ読んでもらいたい本です。明治書院刊。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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