研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.063


全国図書館大会で島根へ(1月おくれ)

 島根、鳥取行きはいつもちょっと大変。福岡空港経由で、大会前日は、午後、「学校図書館を考える会 いずも」や近隣の方たちと、H小学校増設の検討をして、みなさんと夕食。大会1日目夜は、懇親会や2次会で親交をあたためる。2日目学校図書館の分科会はすばらしかった。東京荒川区と島根県の報告には、わが国の学校図書館が急速に発展していることをあらためて感じた。終了後、Sさんの案内で、数年前プランを手伝ったA小学校図書館を訪ねた。校長先生が大変りっぱな方だったので期待していたのに、プランの提案をしてあげただけで、なんの連絡もなく、私が手がけた学校図書館だという風のたよりばかりが聞こえてきて気になっていたが、予想どおりひどいものができていた。それが「いい図書館だ」と伝わっているのが困る。いくら言っても、提案だけ受けとってつくってしまうところがあとをたたない。それでは、絶対にいいものはできないし、負の遺産がふえることはとりかえしようもなく困ること。


鹿児島県を北の長島から南の枕崎まで保育園など訪ねました。

 すぐれた絵本や積み木などで、保育園や幼稚園の園長さんたちに信望の篤いIさんと3日間、保育園や子育て支援室や幼稚園や市立図書館や高校図書館など10あまりも訪ねました。ここ1年ほどのあいだに、北は山梨から鹿児島まで、すでに10ほどの「えほんのコーナー」をつくっていただいたのです。できたところを見せてもらったり、つくろうとしておられるところに、相談にのってあげたり、プランしてあげたり、ほんとに楽しい旅でした。
 どこを訪ねてもIさんとの信頼が篤いことがよく分かり、また、すでにできたところは、ほんとに喜んでいただいていること、これからとり入れることを楽しみにしていただいていることに嬉しくなります。信頼ができあがっ ているところに広めていくのは気持ちのいいものです。鹿児島国際大学の種村エイ子教授(図書館)が、「平湯マジック」など言って推奨していただいていることもあるのでしょう。


長崎市立小中学校図書館 図書館担当教諭 学校司書研修会(1月おくれ)

 夏休みの改修の研修会がよかったとかで、話中心の研修会を計画していただいたのはありがたかった。ハードのインフラ中心で、ソフトも、展示や研修あたりまでふみこんだレジュメをしっかり準備して話した。今回から、これまでのスライドトーク中心から、話中心に大きく変わることになりそう。


山口県立図書館主催の山口県「学校図書館実践セミナー特別講座」

 長崎市と同じレジュメで。近年、山口の学校図書館を幾度か訪ねてお話したのを聞かれた先生が、昨年から県立図書館にできた「子ども読書支援センター」の担当になられ、「生きかえらせるシリーズ」など沢山普及してくださって、今回のこととなった。前泊して、午前中は、会場の光市の学校図書館を訪ねた。


そのまま、関西のA県の県紙の発刊百何年とかの記念事業の手伝いに。

 県紙が発刊記念事業に社をあげて全県下の学校図書館の振興にとりくもうというのは全国初ではなかろうか。こんなことを思いつかれる社長さんはりっぱ。
 近年、国をあげて、子どもの読書と学校図書館の振興にとりくんでいるとき、まさに時宜をえたもの、喜んでお手伝いしましょうと引きうける。まず、国のとりくみ、全国のうごきを、社の担当者でしっかりとらえられて、さてメディアである新聞社としては、どんなとりくみ方があるか考えられたがいいでしょうと伝える。私としてのお手つだいは、国のとりくみや全国のうごきをとらえられる手がかりを急いで準備して伝えたいが、時間がない。ネットなどで調べられるのを側面から助け、まとめられたものにチェックし、アドバイスしていく手伝いとなろうか。大変楽しみ。


学校図書館の建設、改修の提案で関東・関西へ。

 平湯モデル図書館の全国普及にとりくんで10年余、やっと勢いがついてきた感じ。設計事務所、私学法人、そして行政でも、まだほんの一部ながら、従来のプランと大きくちがう、学校教育を変えるものとして、平湯モデルに強い関心を示してもらえるようにやっとなってきつつあるようで嬉しい。


 「研究所だより」NO,51で紹介した『図書館員を志す人々へ』を注文してきた人が、「ぜひ欲しくてアマゾンを見たら1万円とありました。まだありますか」とのこと。
「まだありますか」とはよくきかれること。
(自費出版で再販は考えられないことのよう。
私は、再販しつづけるねうちのあるものしか出版はしないので、元気なかぎり品切れにはしないつもりです)こんなにすばらしい本を、図書館員で読んでいない人、知らない人が多いのはほんとに残念。
 図書館にかかわる人で、まず読んでほしい本の1冊に、森耕一著『近代図書館の歩み』(至誠堂新書)があります。その中でも、2章の「ボストン公立図書館」と4,5章のメルヴィル・デューイの話は圧巻です。図書館員でデューイを知らない人はいないが、十進分類法を考案した人以上のことを知っている人は極めて少ないのはほんとに残念。ということは教えた人たちも知らなかったということでしょう。
 同書は再販の予定なしとのこと。こんな本が売れないのは、適書を利用者にめぐりあわせてやることが最大の使命である図書館員が、肝心の自分がめぐりあうべき適書を見きわめることができなかったということにならないでしょうか。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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