研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.93


これまで経験したことのない大規模館の館内計画に挑戦しました。

 ボストン駅構内で見かけて、「よし、これ、いつか使ってやるぞ」と思っていた、書棚に囲まれ、書棚でできた小さな家の本屋さんの写真です。もっと低く、かわいらしくて、今回の大きな公共図書館の中の、「こどもとしょかん」の中にとり入れました。 子どもたちが喜ぶことうけあいです。家の中で本を読むこともできるし、お話会もできます。

 ここのところ小さすぎる学校図書館の計画が多く、ものたりない思いをしていたところへ、、存分に楽しめる大きな市立図書館の館内計画がまいこみました。
 最大手も含む数社と競うことになりそうですが、市民に喜ばれる、利用を増やす図書館計画なら十分勝てると、ゴールデンウイークをはさむ2週間、いや3週間をかけて、大変な、そしてこの上なく楽しい時をすごしました。
 中央の一般図書のゾーンに空間的に十分な力をもたせること。子ども図書館を、子どもたちに十分楽しいものにすること。閉架50%という、いまだにいわれもなく日本の公共図書館計画に生きつづける神話を破って、公開書庫を大きく、かつ、サービス、管理のゆきとどくところに設けること。この3つをポイントにつくりあげました。
 そしてもう一つは、提案書を、写真と図面とパース中心の、楽しく目を通してもらえるものに、つくりあげようと工夫しました。
 これまでで、いちばん大変な仕事で、いちばん楽しい仕事でした。よい仕事というのは、大変で、楽しいというのは当然でしょう。良い仕事が簡単にできるはずはないし、人は、世のためになることをやれたときに楽しくなるものです。
 利用者にやさしく、利用を増やす図書館づくりに生涯をかけてきた、そのノウハウのすべてを投入したのですから、気に入ってもらえるはず。それでも没になることもいくつも経験したし、それならそれで、これから使えることだし、作業は、愛知の仲間たちと進めたので、仲間の学習の機会としてもえがたいものがあったはずという、満ちたりた心境です。幸い実現できたら、きっと評判になるはずです。


設計事務所に頼まれて京都聖母学院小学校に案内しました。

 4年まえにできた同校に、学校建築で全国指折りの有名な設計事務所を案内するのは、これで二つめです。同校の、子どもの読書と学校図書館への力の入れようは並々ではなく、そのことに敬服しきっているところへ、学園からは、司書教諭、学校司書、図書館主任、学校長と、次々と、平湯モデルによる改修のすばらしさを、実にリアルに、心をこめて話していただきました。しめくくりは、子どもたちのつくった「平湯先生、すてきな図書館をありがとう」の文集まで贈ってもらい、とまどうほどでした。
 子どもの読書と学校図書館に並々ならぬ力を入れている学校の改修をお手つだいをして、その改修のおかげで、存分の図書館教育ができるようになったと、次々と話していただいたら、平湯モデルのプランニングのよさのこれ以上の証明はないので、私の話のために予定していただいた1時間の予定は、20分にはしょってもらいました。3年前に案内した、設計事務所につづいて、今回の設計事務所も平湯モデルをとり入れてもらえるはずです。第3、第4の設計事務所が続くと思っています。
 1年生から、全教科、ネイティブと日本人の先生と2人で教えているクラスの授業も見せてもらいました。
 こんなに、いつも学校をあげて迎えていただくのはありがたいことです。


 「すてきな図書館ありがとうございました」という文集をいただきました。


 キリスト教の学校ですから、神様に関する本を集めた棚を、入ったところに設けました。久しぶりに見て、なかなかいいと思いました。学校史の本棚など、どこの学校にも、こんなに特別につくったがいいと思いつづけています。


 聖母学院小は、部屋を広げられなかったのが一つ残念でした。その前にお手つだいした同じ京都の立命館小学校は、広さも5教室分もあって、ほんとに理想的です。ところが、全国から見学、視察が殺到して、授業にもさしつかえると、制限が加えられているのは残念です。個人でなく、まとまって、手つづきをとっていただけたらできるはずですから、ご覧いただけたらと思います。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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