研究所だより

平湯文夫の研究所だより No.053


県立図書館を長崎市に存続させるシンポジュームのパネリストに。

 久方ぶりに長崎市からお呼びがかかり、20年ぶりばかりに、長崎市や長崎県の図書館のことの記憶を呼びもどすことにかかった。そして近県の熊本、福岡や全国で先端をゆく鳥取、滋賀の図書館を久しぶりに訪ねて、県立図書館問題を意識によみがえらせた。鳥取、滋賀はやっぱり凄い。


 シンポジューム当日は、1700人収容の市の公会堂に1200人ほどは集まって盛会。パネラーの発言は、郷土資料の大切さと長崎市存続の主張には認識を新たにさせられるところもあったが、わが国公共図書館のこの47年間の、図書館を市民のものにすることに努めてきたことへの認識があまり感じられなかった。郷土史家、研究者の視点をでていない。しかし、動員もあったとはいえ、1200名という空前の集まりは、これからに生かせると思った。


シンポジューム風景 座席1700の大会場がかなり埋まりました。


京都、聖母学院小学校図書館改修完成の喜びの電話が幾たびも。

 図書館からも施工した愛知からも、幾度も喜びの電話があった。愛知にとっては第1号で、これだけ喜んでいただけたことは幸先がよい。来月はこの図書館を見学しながらの京都府私立中高等学校図書館担当者の研修会。できたばかりの図書館を見ながらの研修会は最高に分かりやすいはずでありがたい。


長崎の活水中・高校図書館を会場に長崎市の小中高校図書館担当者の研修会。

 題して「草野先生の夢の図書館づくりをお手伝いして」。新しくできる校舎の最高の場所に十分な広さを確保していただいて、ほんとにお膳立てがととのったところへ、私は平湯モデルを配置させていただいただけ。学園の「研究紀要」に平湯モデルでなければならないことを論文にまでして学園側を納得させていただいたことはありがたい。まず、草野先生から、学園内で進めてこられたことをお話いただいたあと、私の話。アプローチから始まり、館内を一巡しながらの説明に大部分の時間をとる。実地で実物を見ながらの話でよく分かったと言っていただいた。
 長崎市の小・中・高校から、50余名いっしょに集まっていただいたこと、とりわけ小中の学校司書の方たちが11名も参加していただいたことは、これまでになかったことで、長崎市の小中学校図書館がいよいよ前進し始めている兆しのように感じた。


活水中高校図書館玄関の看板は、パイン材の木目はやさしく、文字のタイポグラフィはすっきりと美しく、かなり快心の作で、評判もよかったようです。


その図書館のアプローチ、玄関から研修会は始まりました。


新刊の『松居直自伝』ミネルヴァ書房刊を一気に読む。

 ほんとに夢中で読みおえた。すべてがおもしろかった。ご夫妻とご長男友氏には、私の仕事のためにも、長崎、九州のためにも、ひとかたならぬおせわになった。またご三方ともに極く親しくしていただいてきたこともあり格別におもしろく、また尊敬と親愛の思いを倍加した。生きざまがほんとにりっぱである。
 伝記の類は好きでよく読むが、ちょうど、岩波書店を始めた岩波茂雄とそのあとをついだ小林勇の伝記を久しぶりに読みかえしていたところだった。『岩波茂雄伝』安部能成、『惜れき荘主人―一つの岩波茂雄伝』小林勇、『一本の道』小林勇。共に岩波書店刊。『矢内原忠雄』東大出版会刊もすばらしかった。心が洗われ、生きる力がもらえる。


この記事は、2003年7月1日から平湯文夫先生が自身のホームページ「図書館づくりと子どもの本の研究所」に掲載した研究所だよりを再編集して転載したものです。


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